「越」という漢字が表すもの:ベトナムを一文字で表現する意味と背景
「ベトナムを漢字一文字で書くと?」と問われたとき、多くの人が思い浮かべるのが「越」という漢字です。
この「越」という文字には、歴史的な背景と文化的な意味が詰まっており、単なる略称ではなく、ベトナムという国の成り立ちやアイデンティティに深く結びついています。
この記事では、「越」の由来や使われ方をはじめ、なぜベトナムを一文字で「越」と表すようになったのかを、わかりやすく解説していきます。
ベトナムという国への理解が、ひとつの漢字から深まるきっかけになるかもしれません。
「越」とは何か?|漢字一文字に込められた意味
「越」という漢字は、日本語でも「越える」「超える」などの意味で使われます。
ではなぜ、ベトナムがこの「越」で表されるのでしょうか?
◇ 由来は「百越(ひゃくえつ)」という古代民族
紀元前の中国南部からベトナム北部にかけて広がっていた民族を、「百越(ひゃくえつ)」と呼びました。
この「越」は、さまざまな部族を包括的に表す名称であり、その中に現在のベトナム人の祖先も含まれていたとされています。
◇ 「越南」という言葉が生まれた経緯
19世紀初頭、当時の阮(グエン)朝が清朝に国号として申請したのが「南越」でしたが、清側はこれを許さず、「越南」(=越の南側)という名称を認めました。
以降、ベトナムは「越南」とも呼ばれるようになり、「越」という文字が国家の象徴的な略称として定着していきます。
現代における「越」の使われ方
今日でも、新聞や公式資料の中では、国名略称として「越」が使われることがあります。
例えば、以下のような表記で見かけます。
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日越関係(日本とベトナムの関係)
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越人労働者(ベトナム人労働者)
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対越輸出入(ベトナムとの貿易)
これらの言葉は、専門的・行政的な文脈で使われることが多く、漢字圏独自の文化とも言えるでしょう。
「越」がもつ印象と、他国との違い
国名を漢字一文字で表す文化は、中国語圏や日本語の中でよく見られます。
たとえば、
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米(アメリカ)
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英(イギリス)
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仏(フランス)
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独(ドイツ)
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中(中国)
こうした略称の中で、「越」はやや馴染みが薄いかもしれませんが、それだけに独特な響きと歴史的重みを持っています。
また、漢字圏以外では通用しない略称であるため、日本人が「越」という字に触れることで、アジア的な文脈でのベトナム理解を深めるきっかけにもなります。
教養としての「漢字で国名を書く」楽しさ
近年、国際交流や海外旅行、ビジネスの中でベトナムとの接点が増えている日本において、「越」という字の意味を知っておくと、ちょっとした話のネタになることも。
▷ ベトナム語では「Việt Nam(ベトナム)」
ベトナム語の「Việt」は、「越」の漢字に由来しています。
つまり、「越=Việt」という対応関係があるのです。
まとめ|「越」という漢字に詰まった歴史と文化
「ベトナムを漢字一文字で書くと?」という問いに対する答えは、単に略称という以上に、歴史・文化・民族の記憶が詰まった「越」という文字。
この一文字の中には、古代の百越から現代の越南まで、長い時間をかけて形成されてきたベトナムという国家の深みがあります。
言葉に込められた意味を知ることで、きっとベトナムに対する見方や距離感も変わってくるのではないでしょうか。