フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」歌詞の本当の意味とは? 怖いと感じる理由を解説
フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」。勇壮で力強いメロディは、革命の象徴として世界中で愛されています。しかし、その歌詞をよく見ると、「怖い」「過激だ」と感じる言葉が並んでいることに気づくかもしれません。
なぜ、これほどまでに刺激的な歌詞が、フランスの国歌として歌い継がれているのでしょうか? その背景には、フランス革命期の激動の歴史と、当時の人々の並々ならぬ思いが込められています。
「ラ・マルセイエーズ」誕生の背景と歌詞の「怖さ」
「ラ・マルセイエーズ」は、1792年、フランス革命の最中に作曲されました。オーストリアとの戦争が勃発し、祖国が危機に瀕していた状況で、ストラスブールの工兵大尉ルジェ・ド・リールが、兵士たちの士気を高めるために一夜にして作り上げたと言われています。
当時のフランスは、王政が倒れ、国民が自らの手で自由と平等を勝ち取ろうとする激動の時代でした。しかし、国内には王党派が残り、外国からの干渉も絶えない状況。まさに、国が存亡の危機に瀕していたのです。
そんな中で生まれた「ラ・マルセイエーズ」の歌詞には、当時の人々の切羽詰まった状況と、自由を守るための強い決意が色濃く反映されています。
歌詞にみる「怖い」「過激」な表現
特に衝撃的なのが、以下のようなフレーズです。
- 「血まみれの旗がはためいている!」
- 「敵の不浄の血で、我らの畑を潤せ!」
- 「暴君ども、お前らは滅びるだろう」
これらの言葉は、現代の私たちの感覚からすると、非常に暴力的で過激に聞こえるかもしれません。「なぜ、こんなにも血生臭い表現が国歌に?」と疑問に思うのは当然のことです。
歌詞が怖いと感じる理由:革命期の「自由と生存」への切望
「ラ・マルセイエーズ」の歌詞が怖いと感じる理由は、現代の平和な時代に生きる私たちの常識とは異なる、当時の極限状態を理解することで見えてきます。
1. 祖国と自由を守るための「戦い」の歌
この歌は、純粋に平和や友愛を歌ったものではありません。外国からの侵略者や国内の反革命勢力から、国民が自らの手で勝ち取った自由と祖国を守るための「戦い」の歌だったのです。
当時のフランス人にとって、自由は命がけで手に入れたものであり、それを奪おうとする者には、命をかけてでも立ち向かう覚悟がありました。歌詞に登場する「血」や「敵」といった表現は、その決死の覚悟をストレートに表しているのです。
2. 国民を鼓舞し、団結させるための言葉
恐怖や不安が蔓延する中で、人々を鼓舞し、一つにまとめるためには、強い言葉が必要でした。歌詞は、国民一人ひとりに「我々自身の力で立ち上がろう」「自由を守るために戦おう」と強く呼びかけ、団結を促す役割を果たしていました。
「武器を取れ、市民よ!」というフレーズは、まさに国民全員が立ち上がって戦うことを促す、緊急のメッセージだったのです。
3. 「血」は「犠牲」と「覚悟」の象徴
「不浄の血」という表現はショッキングですが、これは単なる暴力性を表すだけでなく、**自由と祖国のために流される「犠牲」と、それをいとわない「覚悟」**を象徴しているとも解釈できます。自分たちの血を流してでも自由を守り抜くという、当時の人々の強い決意が込められているのです。
時代を超えて愛される理由:自由への賛歌として
歌詞の過激さにもかかわらず、「ラ・マルセイエーズ」がフランス国民だけでなく、世界中の人々に愛され、多くの革命や自由運動の象徴として歌い継がれてきたのはなぜでしょうか。
それは、この歌が根底に流れる**「自由への強い希求」**を歌い上げているからです。当時のフランス人が命をかけて勝ち取ろうとした「自由」は、普遍的な価値として、時代や国境を越えて人々の心を打ちます。
「ラ・マルセイエーズ」は、単なる戦争の歌ではなく、不自由な状況から抜け出し、より良い未来を築こうとする人間の尊厳と情熱を歌い上げた、壮大な「自由への賛歌」なのです。
まとめ:歴史的背景を知ると見方が変わる
「ラ・マルセイエーズ」の歌詞は、現代の感覚からすると確かに刺激的かもしれません。しかし、フランス革命という激動の時代背景を理解し、当時の人々が「自由」をどれほど切望し、それを得るためにどれほどの覚悟を持っていたかを知ると、その言葉の一つひとつに込められた重みを感じ取ることができます。
この歌は、フランスの歴史と国民性を深く理解するための鍵となる、とても重要な文化遺産と言えるでしょう。