アメリカ永住権（グリーンカード）の「恐るべき」デメリットとは？取得前に知るべき現実
「アメリカの永住権（グリーンカード）があれば、自由にアメリカで暮らせる！」そう夢見る人は多いかもしれません。確かに、アメリカで生活し、働く上で多くの自由と機会をもたらしてくれるグリーンカードは、非常に魅力的なパスポートです。しかし、その輝かしいメリットの裏には、取得する前に必ず知っておくべき「恐るべきデメリット」が隠されています。
今回は、アメリカ永住権（グリーンカード）がもたらす知られざる負担や制約、そしてそれがあなたのライフスタイルにどう影響するかを詳しく解説します。メリットだけではない現実を知ることで、後悔のない賢い選択をするための参考にしてください。
グリーンカードの「恐るべき」デメリットとは？
グリーンカードは、その名の通り「永住権」であり、アメリカに永続的に住むことを前提とした権利です。そのため、取得者には、アメリカ国民に近い責任と義務が課せられます。これが、場合によっては大きなデメリットとなることがあります。
1. 世界のどこにいても発生する「米国の納税義務」
これが、グリーンカード保持者が直面する最も大きな、そしてしばしば見過ごされがちなデメリットの一つです。
- 全世界所得課税: グリーンカード保持者は、アメリカの市民権保持者と同様に、世界のどこに住んでいようと、どこで収入を得ていようと、アメリカに対して納税義務が発生します。 日本で収入を得ていても、アメリカに税金を申告し、場合によっては納税しなければなりません。
- 確定申告の義務: たとえアメリカに住んでいなくても、毎年、アメリカの確定申告（タックスリターン）を行う義務があります。これには複雑な手続きが伴い、専門家（米国税理士など）に依頼すると高額な費用がかかることもあります。
- 二重課税のリスク: 日本とアメリカの間には租税条約がありますが、それでも二重課税のリスクがゼロになるわけではありません。特に、資産形成や投資を行う際には、複雑な税務計画が必要となり、その管理は大きな負担となります。
2. 「永住の意思」の維持と長期不在によるリスク
グリーンカードは「永住権」であるため、アメリカに永住する意思があるとみなされる必要があります。
- 物理的な滞在義務: 具体的な滞在日数に関する明確な規定はありませんが、一般的に年間183日以上アメリカに滞在することが「永住の意思」を示す目安とされています。これより長くアメリカ国外に滞在すると、グリーンカードを放棄したとみなされたり、入国審査で厳しい質問を受けたりするリスクが高まります。
- 再入国許可（Re-entry Permit）の申請: 1年以上アメリカ国外に滞在する予定がある場合は、事前に「再入国許可証」を申請する必要があります。これも手続きが必要であり、取得しても入国を保証するものではありません。
- グリーンカードの没収リスク: 長期にわたるアメリカ国外での生活は、「永住の意思がない」と判断され、グリーンカードが没収される**「永住権の放棄」**につながる可能性があります。特に、アメリカに資産や家族がいない、就労していないといった状況では、そのリスクが高まります。
3. 市民権取得へのプレッシャーと義務
グリーンカード保持者には、最終的にアメリカ市民権を取得することが期待されています。
- 市民権取得までの期間: グリーンカード取得後、通常5年間（米国市民と結婚している場合は3年間）の永住実績があれば市民権申請の資格が得られます。
- 市民権取得の試験: 市民権を取得するには、英語能力試験やアメリカの歴史・政治に関する知識試験に合格する必要があります。
- 二重国籍の問題: 日本は原則として二重国籍を認めていないため、アメリカ市民権を取得すると日本国籍を喪失することになります。これにより、日本での生活に支障が出たり、日本のパスポートが使えなくなったりするなどの影響が生じます。
4. 出国税（Expatriation Tax）の存在
もしグリーンカードを放棄する場合でも、安易にはできません。
- 富裕層への課税: 一定以上の資産を持つグリーンカード保持者が永住権を放棄する場合、**「出国税（Expatriation Tax）」**が課せられる可能性があります。これは、アメリカに居住していた間に築いた資産に対して、あたかも売却したかのように課税されるものです。
- 対象者: 過去15年間のうち8年以上グリーンカードを保持していた場合や、一定以上の純資産がある場合などが対象となります。
まとめ：グリーンカードは「束縛」と引き換えの「自由」
アメリカの永住権（グリーンカード）は、確かにアメリカでの生活に大きな自由と機会をもたらします。しかし、その裏には「全世界所得への納税義務」「永住の意思の維持」「市民権取得へのプレッシャー」「出国税のリスク」といった、決して小さくないデメリットが存在します。
特に、アメリカと日本を行き来する生活を考えている方や、将来的にアメリカを離れる可能性のある方は、これらのデメリットを深く理解し、自身のライフプランと照らし合わせて慎重に判断する必要があります。グリーンカードは、単なる「自由のパスポート」ではなく、「束縛」と引き換えに得られる「自由」であることを、忘れてはなりません。