「ハイハイ」の期間は長い方がいいって本当？小児科医が教える発達のひみつ
赤ちゃんが成長する過程で、「ハイハイ」はとても可愛らしく、見守る親にとっては嬉しい瞬間ですよね。「ハイハイの期間は長い方がいい」と聞いたことがある方もいるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか？
今回は、小児科医の視点から、ハイハイの期間が赤ちゃんの発達に与える影響、そして、もしハイハイをあまりしない子でも心配しなくていい理由や、発達をサポートする関わり方について詳しく解説します。赤ちゃんの成長は一人ひとり違います。焦らず、我が子のペースを大切に見守るヒントを見つけていきましょう。
「ハイハイ」が赤ちゃんの発達にもたらす大切な役割
「ハイハイ」は、赤ちゃんが座る・立つ・歩くといった次の段階へ進むための、とても重要な準備期間です。単なる移動手段ではない、様々な発達を促す役割があります。
1. 体の筋肉とバランス感覚を育む
ハイハイは、腕、お腹、背中、足など、全身の筋肉をバランスよく使う運動です。特に、腹筋や背筋が鍛えられることで、その後の「立つ」「歩く」ために必要な体幹の安定が養われます。また、四つん這いで体を支えることで、バランス感覚も自然と身についていきます。
2. 空間認識能力と危険予測能力を高める
ハイハイで移動することで、赤ちゃんは自分の力で周囲の空間を探索し始めます。この経験を通して、物との距離感を測ったり、障害物を避けたりする空間認識能力や、危険を察知する危険予測能力が育まれます。これは、その後の自立心や判断力にも繋がる大切な能力です。
3. 手と目の協調性を養う
ハイハイ中は、床にあるものを手で触ったり、目で追ったりする動作を繰り返します。これにより、手と目の協調性が向上し、微細な動きの調整能力が養われます。これは、将来、文字を書いたり、細かい作業をしたりする上での基礎となります。
4. 脳の発達を促す
全身運動であるハイハイは、脳の様々な領域を刺激します。特に、体を左右対称に動かすことで、脳の左右のバランスが整い、協調性が向上すると言われています。また、好奇心を持って探索することで、知的好奇心や探求心も育まれます。
「ハイハイの期間が長い方がいい」って本当？小児科医の見解
結論から言うと、「ハイハイの期間が長い方が絶対的に良い」とは一概には言えません。
確かに、ハイハイがもたらす発達上のメリットは大きいですが、全ての赤ちゃんが同じようにハイハイをするわけではありません。ハイハイを十分に経験せずに、すぐに立ったり歩き始めたりする赤ちゃんもいます。
小児科医としては、「ハイハイを十分にする」ことよりも、**「それぞれの段階で、その子なりの多様な動きを十分に経験する」**ことの方が重要だと考えています。もしハイハイをあまりしなかったとしても、他の方法で全身を動かし、探索する機会があれば、発達に大きな影響はないとされています。
大切なのは、赤ちゃんの発達の個性を尊重し、無理に特定の動きを強いるのではなく、様々な動きを促すような環境を整えてあげることです。
ハイハイをあまりしない子でも大丈夫？心配しなくていい理由
「うちの子、あまりハイハイしないんだけど…」と心配になる親御さんもいるかもしれません。しかし、多くの場合、心配はいりません。
1. 発達の順序は様々
赤ちゃんの発達には個人差が大きく、順序も一様ではありません。ハイハイをせずに、いきなりお座りからつかまり立ち、そして歩き始める「シャフリングベビー」と呼ばれる赤ちゃんもいます。これは異常ではなく、一つの発達パターンです。
2. 他の動きで補っている可能性
ハイハイをあまりしなくても、お尻で移動したり、寝返りやずりばいをたくさんしたりして、全身を十分に動かしている赤ちゃんもいます。これらもまた、体の筋肉やバランス感覚を養う大切な運動です。
3. 最終的に歩ければOK
小児科医が重視するのは、最終的に適切な時期に歩けるようになるかどうかです。ハイハイの期間が短くても、その他の発達に問題がなく、最終的に自分で体を動かして移動できるようになれば、心配する必要はほとんどありません。
【こんな場合は小児科医に相談を】
生後1歳半を過ぎてもつかまり立ちや伝い歩きを全くしない
体の左右どちらかに偏った動きしかしない
首のすわり、お座りなど、他の発達段階にも遅れが見られる
呼びかけに反応しないなど、発達全般に気になる点がある
上記のような場合は、念のため小児科医に相談してみましょう。
赤ちゃんの発達を優しくサポートする関わり方
ハイハイの有無に関わらず、赤ちゃんの運動発達を促すために、親ができることはたくさんあります。
1. 安全な「広いスペース」を確保する
赤ちゃんが自由に体を動かせるように、床に広いスペースを確保しましょう。床は清潔に保ち、転倒の危険があるものや、口に入れてしまう危険なものは片付けておきます。
2. 「やってみたい！」を引き出す環境作り
少し離れた場所に魅力的なおもちゃを置く: 「あのオモチャが欲しい！」という気持ちが、ハイハイやずりばいの原動力になります。
親も一緒に床で遊ぶ: 赤ちゃんの目線に合わせて床で遊び、ハイハイの姿勢を真似して見せたり、誘いかけたりしてみましょう。
ハイハイしやすい服装を選ぶ: 動きを妨げない、ゆったりとした服装を選びましょう。
3. 「見守り」と「声かけ」で安心感を
赤ちゃんが自分で移動しようとする姿を、温かく見守り、たくさん声かけをしてあげましょう。「がんばってるね！」「すごいね！」といったポジティブな声かけは、赤ちゃんの意欲を引き出し、自信に繋がります。
4. 焦らず「個性」を大切にする
赤ちゃんの発達は本当に一人ひとり違います。他の子と比べて焦ったり、無理にハイハイをさせようとしないことが大切です。その子のペースを尊重し、成長の過程を楽しみましょう。
まとめ：ハイハイは通過点。大切なのは「多様な動き」と「親子の関わり」
「ハイハイ」は赤ちゃんの成長にとって大切なステップですが、その期間の長さだけが重要なのではありません。それよりも、赤ちゃんが多様な動きを十分に経験し、自ら探索する機会を持つことが、心身の発達にとって何よりも大切です。
焦らず、我が子の個性を受け入れ、安全で楽しい環境を整えてあげてください。そして、たくさんの温かい言葉と愛情を注ぐこと。それが、赤ちゃんが健やかに成長するための、一番のサポートになるはずです。